私と一緒に西国に行ってはもらえぬでしょうか。
西国のとある山あいの小さな村に、紀氏の里がございます。そこでは今も、紀氏一族の末裔が、秘伝を受け継ぎ厳しい掟を守って、ささやかに暮らしております。紀氏の支流が都に移り住む前からずっと続く古い主流の血筋でございます。
もうとうに体感が失われ、意味のない形骸化した儀式を、さも「これこそが我らが使命、宿命」とばかりに後生大事に守り続けているのでございます。
私は彼らに伝えたいのでございます。それぞれに己が生命を育めと。しかし、私の声が彼らに届く事はありません。あなた様の言葉ならば、このような奇妙きてれつな話でも、きっと彼らにも聞き入れてもらえる事でございましょうて。
道案内なら私が致します。今度の休みにでもいかがでしょうか。道中、まだまだ語りたい話もござりますれば、是非ご一緒いただきたく存じますが・・・。
西国の地は、あなた様にとっても古里の地。山も川も森の木も、あなた様を喜んで迎えてくれる事でございましょう。
さ、いざ、西国へ・・・。
《西国奇譚・・・作中人物によるあとがき》
この物語は、作者の妄想により生み出されたものでござりますれば、読者の皆様がたにおかれましては、決して盲信なされぬよう、かたくお願い致すところでござります。
作中に出されました人物や一族、土地名に関しまして、なんら現実との接点はございませぬゆえ、軽く読み流していただけますと、私といたしましても、安心してゆっくり眠れるというものでござります。
最後になりましたが、長く、意味ふの物語を読んで下さりました事、作者になり代わりまして深くお礼申しあげます。
2013/4/8