ルン(kaze)

12編の詩を載せています

2014年3月20日現在

女性性

女らしさは

あまたの男性の

目を惹きつけるために あるのだろうか

心を魅惑するために あるのだろうか

 

女性性と女らしさが結びつくとき

その、ほんのわずかな隙間に 

呪が忍び込む

 

女性性は、本来

その身に生命をはらみ、はぐくむ力・・・

それは

おそらく、男女の性別に関わらず

また、この地球上

生きとし生けるもの、全てが潜在的に持っている

エナジーの素

 

なぜなら

地球そのものが

女性性の原点だから

 

呪縛を解き放ち

原点に還ろう

たったひと粒の、愛おしい卵子へと

小さくて大きい

宇宙の卵子・・・地球

2013/10/7 

宝石という名をもつ少年

モンゴルから、その少年はやってきた

彼と初めて会った頃、彼はまだカタコトの日本語で

静かに話す、背の高い痩せた少年だった

 

数ヶ月もするうちに

少年の日本語は、またたくまに上手くなり

その話し方は

私が知っている、ある中国人の男性を思い出させた

その中国人は、私にとっては優しくて素敵な男性

 

そのことを少年に話すと

少年は、口をゆっくりと(重そうに)ひらき、こう言った

「もしも、僕の父がそれを聞いたら、

父はあなたを殺す・・・と言うでしょう

だから、そのことは、もう言わないでください」

 

私は、何かとんでもなく少年を傷つけたのだと知った

少年は、そんな私を気遣うように

さらに続けた

 

「僕の祖父母は、むかし、中国人に家を焼かれ

ひどい目に合わされて

中国人をとても憎んでいます

父はそれを見ていました

だから、父は中国人が嫌いなのです

僕はその話を父から聞かされ育ちました

僕の日本語が中国人に似ているというのは

僕にはとてもつらいことです」

 

そう言って、彼は力なく笑った

 

○○人であるとか、××人であるとか・・・

一人の人間として、そこに存在する以前に

民族や国家は存在するのだろうか?

 

どうしようもなく刻み込まれた

民族の傷を、

一人の個人として

癒していけるのだろうか?

 

民族の誇りが

国家の名によって汚された歴史があったとしても

その内側深くから

助けあい、いたわりあい、愛しあえる

関係を築くのは

やはり

個人が出発点になるしかない

・・・のかもしれない

 

ふと、その少年のことを思い出す秋の日

 

彼の名には、

モンゴル語で

『宝石』という意味の言葉が

ついていた

2013/9/23 

う・そ

まい話に、ご用心

っくり真似ても

 

ちは外

とは内

 

そには嘘が

のまま返る

2013/9/22 

風(ルン)

風を見ていると

からだじゅうに 風がふいた

からだの表面に

ちっちゃなうずが まきはじめてた

うでにも、あしにも

むねにも せなかにも

 

小さなうずは

からだじゅうで うずまいて

しばらく

皮膚と内部を 行ったり来たり

 

そして

ふっと、いっせいに消えた

 

もういちど、うずまき できないかな

って思いながら

風を見ていたら

こんどは、あたまで うずまいた

 

うずが いくつあったのか

かぞえておけば よかったな

 

風・・・ルン・・・

2013/10/3 

青は愛より出でて

空の青は 愛より出でて

海が その愛を映し 深く輝く

 

私の瞳は あなたの愛を 映し

世界は 私の心を 映す鏡

 

今日も、みんなの頭上には

愛から生まれた 青い空

 

ー注ー

《青は藍より出でて 藍より青し

 氷は水これをなして、水より寒し》

とは、荀子の言葉ですが、

上の詩は、これと(意味的に)関係ありません(滝汗)

あしからずm(__)m

2013/10/4 

水の音

水が、ピチャン・・チャプン・・・

と、とってもかわいい声で笑った

おどろいた

今まで、数え切れないほどの水の音が まわりにあったのに

私は、ちゃんと聴いていなかった

意味のある言葉も 大事だけれど

心を動かす音楽にも ずいぶん癒されたけれど

こんなにも身近に

まるで小さな妖精のように

あらわれては消え 消えてはまたあらわれる

水の言の葉が 存在していたなんて

2013/10/6 

耳がひろっている音

耳は、外部の音を拾うその後ろで

内部の音も拾っている

しーんと静まりかえった空間に身をおくと

内部の音が、かすかに聞こえ始める

時には、鈴が鳴るような

時には、ひぐらしが鳴くような

時には、かん高い金属音のような…

じーっとその音に 耳を傾けていると

左右で

高さが違うことに

気づく

左よりも、右が微妙に高い

二つの音が うねりをあげて

あたまのなかを響かせる

これは ただの耳鳴り?

それとも 耳のそばを流れる 血潮の音?

それとも

わたしの 骨の音…?

2013/10/10 

井の中の蛙、大海を知りて

井戸に住むカエルが、旅に出て

初めて大海を目にした時

ワオッ!と叫んだ

果て知れぬ海の広さを知り

底知れぬ海の深さを知り

驚くと同時に、嬉しくなった

「なんと私は、これまで小さな世界にいたことか・・・

まるで井の中の蛙ではないか!」

いや、井戸に住んでいたのだから当たり前の話だが・・・

 

そこへ、海の神が現れて、カエルにこう言った

「井戸のカエルに、海のことを話してもわかってもらえない

しかし、あなたはこうして、大海を目の当たりにして、とても驚き喜んでくれている

これでもう、あなたは私と共に『道(タオ)』を語る友となった」

 

《井の中の蛙》ということわざがあるが

これを、他人に向けて言うのでなく

また、他人から言われるのでもなく

それまでの自分に対して 使うことができたなら

こんなふうに、ことわざの続きを考えることもできる

《井の中の蛙 大海を知りて 生涯の友を得る》

 

一つ付け加えて言うなら

井とは、自分の心の偏狭さに気付かない状態

上には上があると思っているのも、この範疇に含まれる

大海とは、自らの内側に広がる 深くて大きな意識の海

海の神とは、心の海で 私たちの気づきを待っている 

もう一人の私・・・かもしれない

そして、そんな心の海は

一人の人間の内部では収まらず

全てにあまねく広がり、世界をつなげているのかもしれない

2013/10/11 

TERESCOPE

言葉を ふんわりと 空間に浮かべてみる

なんだっていい

 

たとえば・・・空

そして、きままに泳がせてみる

 

空の次に浮かんでくるのは

たとえば・・・青

たとえば・・・雲

そして、そのまま流されてみる

 

ちぎれたって 平気

また次の言葉が浮かぶから

 

たとえば・・・おひさま

たとえば・・・猫

甘えたしぐさの、子猫・・・

 

流れが止まってしまうときは

たぶん、そこが

心の扉・・入口のありか

ひらく勇気が、ちょっと足りないなら

 

言葉の望遠鏡で、覗いてみようか

ハートの宇宙

きらめく 星座

2013/10/16 

アコガレ

手の届かないところにあって

追い続ける理想としての・・憧れ

自分にはないものとしての・・憧れ

 

そんな憧れとは

まったく違うアコガレが

私の中に存在する

 

それは

かつて 知っていた

かつて そこにいた

かつて そうであった・・・もの

 

ときおり 風の中に

音の中に

その断片を見る

 

ほんの微かな切れ端だから

記憶を呼び戻すには いたらないけれど

なつかしくて、なつかしくて

たまらなくなる

 

聞こえる歌を聴きながら

聞こえない音に触れるような

そんな感じの

・・・アコガレ

2013/10/19 

薔薇と檸檬

僕の前に、一輪の赤い薔薇

そして 一個の檸檬がある

テーブルの向こうから

君もまた、薔薇と檸檬を見つめている

僕を背景にして

 

君の気持ちが見えないからといって

それが何だというのだ

僕の心を見せられないからといって

だから何だというのだ

 

こんなにも確かに

見えるものたちが 二人をつないでいるじゃないか

 

僕たちの前には

一輪の赤い薔薇

そして 一個の檸檬があり

それで 充分

僕たちは、“今”を共有している

 

愛は いつも

心の外で 表現される

2013/10/20 

いろはにほへと

色、余(ハニホ)へと

匂いを残し

散りゆくようで、消えゆかず

花にふく風 心の奥の

幻の山 今日も超ゆらば

朝の夢見は

浅き瀬の川

 

四十七字のいろはの文字を

並べてはつなぎ、結びてはくくる

言の葉 拾い集めて

心を渡す 渡し守

みごと、彼岸(アナタ)に渡せたならば

拍手喝采

さくらふぶきを舞わせておくれ

2013/10/29